計算のしかた
手取りは「総支給 − 社会保険料 − 税金」です。総支給には、明細の基本給・処遇改善の手当・資格手当・夜勤手当・深夜手当・残業手当・通勤手当を、書いてある金額のまま入れます。 そこから健康保険・介護保険料(40〜64歳)・厚生年金・子ども・子育て支援金・雇用保険・所得税・住民税(概算)を引きます。料率は2026年度(令和8年度)のものです。
- 雇用保険:介護の仕事は「一般の事業」に当たり、本人負担は 5/1,000 です(建設の事業は 6/1,000)。
- 1時間あたりの賃金:(基本給+処遇改善の手当+資格手当など毎月決まって出る手当)÷ 1か月の平均所定労働時間。法律(労働基準法施行規則19条)の出し方です。家族手当・住宅手当・通勤手当などは入れません。
- 月の所定労働時間:分からないときは173時間で計算します。週40時間で働ける1か月の上限(40 × 365 ÷ 7 ÷ 12 ≒ 173.8時間)に近い値で、1時間あたりの賃金が低めに出るぶん、法律の目安を控えめに見積もります。
- 深夜手当・残業手当が分からないとき:法律の目安(深夜25%・時間外25%・法定休日35%)が払われているとして総支給に足します。明細に金額があれば、その額をそのまま使います。
結果は概算です。社会保険料は実際には4〜6月の給料の平均などで1年分が決まり、住民税は前の年の所得で決まるため、その月の明細とは少しずれることがあります。
夜勤手当と深夜割増の違い
明細に並ぶ「夜勤手当」と「深夜手当(深夜割増)」は、決まり方が違います。
- 深夜割増は法律の決まり:夜10時〜朝5時に働いた時間には、通常の賃金の25%以上を上乗せして払う決まりです(労働基準法37条4項)。
- 夜勤手当は会社の決まり:法律に定めは無く、金額や回数の数え方は職場の就業規則・賃金規程で決まります。
たとえば、基本給20万円・処遇改善の手当2万円・資格手当1万円・所定173時間なら、1時間あたりの賃金は 230,000 ÷ 173 ≒ 1,329.48円。夜10時〜朝5時に6時間働く夜勤1回の深夜割増は、1,329.48 × 25% × 6 ≒ 1,995円(1円未満切り上げ)が法律の目安です。 明細の深夜手当が1回あたりこれ以上なら、目安に届いています。
明細に深夜の行が無いときは、夜勤手当の中に深夜割増が含まれていることがあります。その場合は、夜勤手当(1回)が深夜割増の目安を上回っているかを見ます。詳しくは介護の夜勤手当の計算方法で説明しています。
16時間夜勤の休憩・仮眠と夜勤明け
- 休憩:働く時間が6時間を超えるときは45分以上、8時間を超えるときは1時間以上の休憩を、勤務の途中に取らせる決まりです(労働基準法34条)。夜勤の時間帯でも同じです。
- 仮眠:呼ばれたらすぐ対応する決まりの仮眠や待機は、休憩ではなく働いた時間に当たります(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。
- 夜勤明け:夜勤が終わった後の「明け」の日は、法律上の休日(法定休日)に数えられません。
- 16時間夜勤と残業:1か月単位の変形労働時間制(労働基準法32条の2)で勤務表に16時間夜勤が組まれていれば、その日の所定の時間内は時間外になりません。変形労働時間制が無い職場で1日8時間を超えて働くと、超えた分は時間外になりえます。このツールは時間外を計算し直さず、明細の時間外の時間と金額を使います。
処遇改善手当(2026年6月の拡充)
- 2026年6月から、介護職員だけでなく介護従事者を対象に、幅広く月1.0万円の賃上げを実現する措置がとられました。生産性向上や協働化に取り組む事業所の介護職員には、さらに月0.7万円が上乗せされます。 定期昇給0.2万円を含めて、合計で介護職員について最大で月1.9万円の賃上げが実現する措置、とされています。
- この1.9万円は、1人ひとりに必ず届く額ではありません。加算は事業所に入り、だれにどう配るかは事業所が決めます(職務や勤務の実態に見合わない、著しく偏った配り方はしないこととされています)。国の補助事業のリーフレットでも、金額は「常勤換算の職員一人当たり」の、平均的な職員配置をもとにした額です。
- 令和6年度の調査では、賃金改善の方法として「ベースアップ等により対応」した事業所が59.8%(複数回答)でした。ベースアップの形だと、明細に「処遇改善手当」の行が出ないことがあります。
- 事業所は、賃金改善を行う方法などを職員に知らせることになっています。職員から処遇改善加算の賃金改善について問い合わせがあれば、その職員の賃金改善の内容を書面などで分かりやすく答えることになっています。
このツールの「手取りに残る額」は、いまの手取りから、処遇改善の手当を0円にしたときの手取りを引いた額です。社会保険料と税金がかかるので、手当の額がそのまま手取りに増えるわけではありません。 明細での見つけ方と聞き方は処遇改善手当は自分にいくら?にまとめています。
介護職の残業の上限
介護の仕事には、2019年4月(中小企業は2020年4月)から一般の残業の上限が適用されています。建設業のような猶予や、災害の復旧・復興の例外はありません。
- 原則:時間外は月45時間・年360時間まで
- 特別条項つきの36協定があっても:時間外は年720時間以内、時間外+休日は毎月100時間未満、2〜6か月の平均80時間以内、45時間を超えるのは年6回まで
このツールは、職場が特別条項つきの36協定を結んでいる前提で、この4つの上限で判定しています。
よくある質問
夜勤手当に、深夜割増は含まれている?
職場によります。夜勤手当の中に深夜割増を含めると就業規則(賃金規程)にはっきり書かれていれば、別に「深夜手当」の行が無くても問題ないとされています。 ただし、そのときも夜勤手当が法律の深夜割増(夜10時〜朝5時の時間 × 1時間あたりの賃金 × 25%)を下回ってはいけません。明細と規程の両方で確かめてみてください。
夜勤の仮眠の時間にも、給料は出る?
呼ばれたらすぐ対応する決まりになっている仮眠や待機は、休憩ではなく働いた時間(労働時間)に当たります。厚生労働省のガイドラインでも、仕事から離れることが保障されていない待機の時間(手待時間)は労働時間とされています。 自由に過ごせて、呼ばれることのない時間だけが休憩です。
処遇改善手当が明細に無いのは、おかしい?
おかしいとは限りません。処遇改善の分を、基本給などの水準の引上げ(ベースアップ)で配る事業所も多く、その場合は「処遇改善手当」の行が出ません。賞与・一時金の形で払う事業所もあります。 事業所は賃金改善の方法を職員に知らせることになっていて、問い合わせがあれば書面などで分かりやすく答えることになっています。
パートでも、処遇改善の分はもらえる?
配り方は事業所が決めます。厚生労働省のQ&Aでは、時給や日給を引き上げることも「基本給等の引上げ」に当たるとされています。パートの時給に上乗せされていることもあるので、時給の変化もあわせて見てみてください。
処遇改善手当は、残業代・深夜割増の計算に入る?
毎月払われる手当なら入ります。割増賃金の計算から外せるのは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時の賃金・1か月を超える期間ごとの賃金(賞与など)だけと法律で決まっているためです(労働基準法37条5項・同施行規則21条)。 賞与・一時金の形で払われる分は入りません。
介護職員以外(看護師・ケアマネジャー・事務など)も対象?
2026年6月から、処遇改善加算の対象が「介護職員」から「介護従事者」に広がりました。経験・技能のある介護職員の処遇改善が大事であることに気を配りつつ、事業所の中で柔軟に配分できることになっていて、介護職員以外の職種も対象に含まれます。訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援などにも、新しく処遇改善加算が設けられました。
夜勤明けの日は、休日になる?
法律上の休日(法定休日)にはなりません。法定休日は原則として午前0時から午後12時までの丸1日休むことなので、夜勤が終わった後の「明け」の日は休日に数えられません(厚生労働省・労働局「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」)。
出典と確認日
- e-Gov 法令検索「労働基準法」(第32条の2:1か月単位の変形労働時間制、第34条:休憩、第37条:時間外・休日・深夜の割増賃金)(新しいタブで開きます)
- e-Gov 法令検索「労働基準法施行規則」(第19条:1時間あたりの賃金の出し方、第21条:割増賃金の計算に入れない賃金)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(PDF)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省・労働局「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」(新しいタブで開きます)
- 静岡労働局「1か月単位の変形労働時間制をとる場合の時間外労働の考え方」(PDF)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省「スタートアップ労働条件」時間外労働の上限について(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」(一般の事業 本人負担 5/1,000)(PDF)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省 老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」老発0313第6号(PDF)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」(処遇改善加算の拡充)(PDF)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省 老人保健課 事務連絡「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(2026年3月13日)(PDF)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省 リーフレット「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善事業」(PDF)(新しいタブで開きます)
- 社会保障審議会 介護給付費分科会(第245回)資料「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」(PDF)(新しいタブで開きます)
確認日:2026年10月1日。制度や料率が変わったときは、計算と解説を見直します。計算結果は概算(目安)です。
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